石綿の規制及び石綿の事前調査義務について

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1. 石綿の全面禁止石綿の全面禁止

石綿の全面禁止」について石綿(アスベスト)は、その優れた耐熱性や絶縁性から、かつては建築材料や工業製品に広く使用されていました。しかし、その健康リスクが明らかになるにつれ、多くの国で使用が禁止されています。以下では、石綿の全面禁止に至った経緯と現在の状況について詳しく説明します。

1. 石綿の健康リスク

石綿の微細な繊維は、吸入すると肺に蓄積し、深刻な健康被害を引き起こします。主な疾患は以下の通りです。

  • アスベスト肺(石綿肺):石綿繊維が肺に沈着し、肺組織が線維化する疾患。呼吸困難や慢性的な咳を引き起こします。
  • 中皮腫:胸膜や腹膜に発生する悪性腫瘍。石綿曝露が主な原因で、治療が難しい疾患です。
  • 肺がん:石綿への曝露により、肺がんのリスクが大幅に増加します。

これらの疾患は潜伏期間が長く、石綿に曝露してから数十年後に発症することが多いため、過去の使用による健康被害が現在も問題となっています。

2. 日本における石綿規制の歴史

日本では、石綿の健康リスクが明らかになるにつれ、段階的に規制が強化されてきました。

  • 1975年:吹付け石綿の使用が原則禁止。
  • 1989年:クロシドライト(青石綿)とアモサイト(茶石綿)の製造・輸入・使用が禁止。
  • 1995年:建材用途での石綿の使用がほぼ禁止。
  • 2004年:石綿含有量が0.1%を超える製品の製造・輸入・使用が全面禁止。
  • 2006年:石綿を含む全ての製品の製造・輸入・使用が全面禁止に。

これにより、新規の石綿製品の市場流通は完全に停止しました。

3. 石綿の全面禁止の内容

全面禁止の主なポイント

  • 製造の禁止:石綿を含む製品の製造は一切禁止されています。
  • 輸入の禁止:国外からの石綿および石綿含有製品の輸入が禁止されています。
  • 譲渡・提供の禁止:石綿製品の売買や無償提供も禁止されています。
  • 使用の禁止:石綿を新たに使用することはできません。

例外措置の廃止

以前は一部の特殊用途で代替品がない場合に限り例外が認められていましたが、現在では全ての用途で代替品が存在するため、例外措置はありません。

4. 全面禁止による影響と対応

建築物への影響

  • 既存建築物全面禁止以前に建設された建物には、石綿含有建材が使用されている可能性があります。
  • 解体・改修時の措置石綿を含む建材の解体・改修を行う場合、事前調査が義務付けられています。専門の資格を持つ作業者が安全に除去・処理を行います。

廃棄物処理

  • 適正な処理:石綿含有廃棄物は、特別管理産業廃棄物として厳重に管理され、飛散防止措置を講じた上で適切に処理する必要があります。

産業界への影響

  • 代替品の開発:建築材料や工業製品で使用されていた石綿の代替品が開発・普及しました。
  • 技術革新:新素材の研究開発が進み、現在では安全で環境に優しい製品の提供が促進されています。

5. 現在の取り組みと課題

健康被害者の救済

  • 石綿健康被害救済制度:石綿による健康被害者に対し、医療費の給付や補償が行われています。
  • 情報提供と相談窓口:被害者やその家族が適切な支援を受けられるよう、情報提供と相談体制が整備されています。

安全教育と普及啓発

  • 作業者教育石綿に関わる作業に従事する者への安全教育が徹底されています。
  • 一般市民への啓発:石綿の危険性や適切な対応方法についての情報が広く提供されています。

今後の課題

  • 残存石綿の管理:既存の建築物に残る石綿の安全な管理・除去が引き続き重要です。
  • 国際的な対応一部の国では石綿の使用が続いており、輸入製品に含まれる可能性があります。国際協力による石綿使用の全廃が求められています。

6. 国際的な石綿の規制状況

世界的な動向

  • 欧州連合(EU):EU全域で石綿の製造・使用が禁止されています。
  • アメリカ:一部の石綿製品の使用が禁止されていますが、全面禁止には至っていません。
  • アジア諸国:多くの国で石綿の規制が進んでいますが、使用が続けられている国も存在します。

国際機関の取り組み

  • 世界保健機関(WHO)国際労働機関(ILO)は、石綿の使用停止と被害防止を推進しています。
  • ロッテルダム条約:特定有害化学物質の国際的な移動を規制する条約で、石綿も対象物質に含まれています。

まとめ

石綿の全面禁止は、過去の教訓を活かし、将来の健康被害を防ぐための重要な措置です。これにより、新たな石綿曝露リスクは大幅に減少しました。しかし、過去に使用された石綿の適切な管理や、健康被害者への支援など、引き続き取り組むべき課題も多く残されています。

私たちにできること

  • 情報の収集:石綿に関する正しい知識を持ち、適切な対応を心がけましょう。
  • 専門家への相談:建物の解体や改修を検討する際は、専門業者や自治体に相談しましょう。
  • 啓発活動への参加:石綿の危険性や適正な処理方法について、周囲の人々と情報を共有しましょう。

石綿は、国民の健康及び作業員の健康被害を守るために必要な義務になりました。現在のお客様及び施工会社様に大変な費用負担もあります。ご理解のほどよろしくお願いいたします。

義務違反には、刑事罰が科せられます。罰金や悪質な場合には懲役刑がありますので、ご注意ください。


情報提供先はこちらを参照してください。(引用元:厚生労働省)


建築物における石綿の事前調査義務建築物における石綿の事前調査義務について

1. 石綿事前調査義務の背景と目的

健康被害の防止

  • 石綿は、その繊維を吸入することで中皮腫肺がんなどの深刻な疾患を引き起こします。
  • 潜伏期間が長く、症状が現れるまでに数十年かかることもあります。
  • 過去に使用された石綿含有建材が、解体や改修時に飛散するリスクを抑えることが必要です。

法的規制の強化

  • これまで石綿の使用は徐々に禁止されてきましたが、既存建築物にはまだ多くの石綿が残っています。
  • 作業時における石綿の飛散を防ぐため、事前調査の義務化が行われました。

2. 石綿事前調査の法的根拠

大気汚染防止法の改正

  • 2020年(令和2年)4月1日改正大気汚染防止法が施行されました。
  • この改正により、解体・改修・補修工事を行う際に、事前に石綿の有無を調査することが義務付けられました。

労働安全衛生法

  • 労働者の健康確保の観点からも、石綿に関する調査と適切な対策が求められています。

3. 事前調査の対象となる工事

対象工事

  • 建築物や工作物の解体工事
  • 建築物や工作物の改造、補修工事

対象規模

  • 建築物の規模に関わらず、すべての解体・改修工事が対象となります。
  • 特に、吹付け石綿石綿含有建材が使用されている可能性が高い建物は注意が必要です。

4. 事前調査の内容と方法

調査内容

  • 石綿含有建材の有無:建物内に石綿が含まれる建材が使用されているかどうか。
  • 建材の種類と使用箇所:どの部分に、どのような石綿含有建材が使用されているか。

調査方法

1,書類調査

  • 設計図書や建築当時の記録を確認し、石綿使用の有無を調べます。

2,目視調査

  • 実際に現地で建材を確認し、石綿含有の可能性がある建材を特定します。

3,サンプリング調査

  • 必要に応じて、建材のサンプルを採取し、専門の分析機関で成分分析を行います。

分析方法

  • 位相差顕微鏡偏光顕微鏡を用いた定性分析
  • 必要に応じて、X線回折装置(XRD)電子顕微鏡(SEM)による詳細な分析

5. 調査者の資格要件

有資格者による調査

  • 事前調査は一定の知識と技能を有する者が行う必要があります。(資格保有者)

主な資格

  • 建築物石綿含有建材調査者
  • 一級・二級建築士(石綿に関する講習を修了した者)
  • 石綿作業主任者

研修の受講

  • 調査者は、所定の石綿関連の研修を受講し、最新の知識と技術を習得することが求められます。

6. 調査結果の記録と報告

調査結果の書面化

  • 調査の結果は、「石綿事前調査結果報告書」として書面にまとめます。
  • 調査方法、結果、使用箇所、石綿の種類などを明確に記載します。

報告義務

  • 都道府県知事等への届出
  • 事前調査結果を所管の都道府県知事等に届出する必要があります。
  • 特に、一定規模以上の解体・改修工事の場合は必須となります。
  • 関係者への周知
  • 元請業者や下請業者、作業者に対して、調査結果を共有します。
  • 安全な作業手順の策定と実施につなげます。

7. 石綿が確認された場合の対応

作業計画の策定

  • 石綿が含まれることが判明した場合、「石綿障害予防規則」に基づく作業計画を策定します。

飛散防止対策

  • 作業エリアの密閉化:石綿の飛散を防ぐため、作業場所を密閉します。
  • 湿潤化:作業箇所を水で湿らせ、粉じんの飛散を抑えます。
  • 防護具の着用:作業者は防塵マスク保護衣などの適切な防護具を着用します。

適切な除去・処理

  • 石綿含有建材は、専門の技術者が適切な方法で除去します。
  • 発生した廃棄物は、法令に基づいて適正に処理します。

8. 周辺住民への配慮

事前周知

  • 工事開始前に、周辺住民に対して工事内容や石綿対策について説明します。

苦情対応

  • 工事中に発生する不安や疑問に対して、誠実に対応する体制を整えます。

9. 罰則と責任

法令違反の罰則

  • 事前調査を怠ったり、虚偽の報告を行った場合、罰則が科されます。
  • 大気汚染防止法や労働安全衛生法による行政処分や刑事罰の対象となります。

責任の所在

  • 元請業者はもちろん、発注者も適切な対応を行う責任があります。

10. 私たちにできること

情報収集

  • 建物の解体や改修を計画している場合、まず石綿の有無を確認しましょう。

専門家への相談

  • 信頼できる有資格者や専門業者に調査と対策を依頼します。

安全意識の共有

  • 作業者だけでなく、関係者全員で石綿に対する安全意識を高めます。

まとめ

建築物における石綿の事前調査義務は、私たちの健康と安全を守るために非常に重要な取り組みです。適切な調査と対策を行うことで、石綿による健康被害を未然に防ぐことができます。

もしご不明な点やご不安なことがあれば、遠慮なく弊社や専門家や自治体の窓口に相談してください。一緒に安全な環境を築いていきましょう。


情報提供先はこちらを参照してください。(引用元:厚生労働省)