筋交いは抜けるのか ── 「かっこいいけど、やめた方がいい」と伝えた日
木造の一軒家をリノベーションするとき、現地調査でいちばんよく聞かれるのが「この壁、抜けますか」という質問です。
抜ける壁と、抜けない壁があります。そして抜けるかどうかを決めているのは、壁の中に入っている筋交いや柱です。この記事では、なぜ抜けない壁があるのかと、実際に「やめた方がいい」とお伝えした戸建てリノベーションの話を書きます。
壁には二種類ある
壁には、部屋を仕切っているだけの壁と、建物を支えている壁があります。後者を耐力壁と呼びます。
筋交いは、柱と柱のあいだに斜めに入れる材です。地震や風で建物が横に揺さぶられたとき、四角い形が崩れるのを防ぎます。抜いてしまえば、その分だけ建物を支える力が減ります。
どうやって見分けるのか
まず図面を見ます。図面があれば、どこに筋交いが入っているかが分かります。ただ、図面があっても、実際に自分の目で確かめます。
図面が残っていない家も多くあります。その場合は、解体したときや、構造を実際に見たときに判断します。壁を開けてみて初めて分かることもあります。
「筋交いを取って、構造をいじりたい」
これは Pono.House を立ち上げる前の話です。写真は残っていません。
戸建てのお客様から、こう相談を受けたことがあります。
空間をすっきりさせたい、というご要望でした。デザインとしては魅力的で、正直、かっこいい案だと思いました。見た目はかなり良くなる。
ただ、現場を見て思ったことがあります。構造的に無理がある。安全面で不安が残る。将来の耐震と劣化のリスクがある。
だから、危ないと思う、と正直にお伝えしました。そのうえで、答えを押し付けるのではなく、問いを立てました。
「命と、デザイン。どちらを優先しますか」
重い話です。でも、きちんと説明しました。決めるのはお客様です。結果的に、「今回はやらない」という判断で納得されました。
このときは、代替案を出していません
工事を残そうと思えば、何か別の案を出すこともできました。実際、そうする会社もあると思います。
出しませんでした。安全のことと、家の構造を考えて、壊さないほうがいいと思ったからです。
お客様の要望をそのまま工事にするのが、本当のプロだとは思っていません。現場で見た違和感は、丁寧にお伝えします。重い話でも、きちんと説明します。
筋交いは、絶対に取れないのか
現地調査やその他の判断で「大丈夫」と言う会社もあります。
ただ、安易に取ってしまうのには賛成できません。筋交いと耐力壁は、基本的に取らないほうがいい。実務家としての意見です。三十年やってきた中で、そう思うようになりました。
見た目は後から変えられる。構造は変えられない
安心して暮らせること。長く住めること。その上に、デザインがあります。
この順番を間違えると、住んでから後悔します。見た目は後からでも変えられます。でも、構造は後からでは取り返しがつきません。
なお、この記事は木造の一軒家の話です。マンションは構造が異なり、壁の扱いも管理規約が関わってきます。詳しくはマンションをリノベーションする場合の注意点をご覧ください。
よくある質問
Q. この壁は抜けますか?
A. 抜ける壁と、抜けない壁があります。建物を支えている耐力壁や、壁の中の構造によってはできない場合があります。まず図面を見て、図面がなければ解体したときや構造を見たときに判断します。
Q. 筋交いは絶対に取れないのですか?
A. 現地調査やその他の判断で大丈夫と言う会社もあります。ただ、安易に取ってしまうのには賛成できません。筋交いと耐力壁は基本的に取らないほうがいい、というのが実務家としての意見です。
Q. 図面が残っていないのですが、相談できますか?
A. できます。図面があると助かりますが、なければ無くても大丈夫です。解体したときや構造を見たときに判断します。
Q. 危ないと言われたら、諦めるしかないのですか?
A. 構造に無理があると判断した場合は、正直にお伝えします。かっこよくなる提案でも、安全面に不安があればおすすめしません。
まとめ
「この壁、抜けますか」に一言で答えると、図面と現場を見なければ分からない、になります。
そして見た結果、抜かないほうがいいと判断すれば、そうお伝えします。木造の一軒家のリノベーションをお考えの方は、ご相談ください。図面はなくても構いません。


